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明野・三澤農場の今

2008年4月

甲州ブドウ、そして明野農場の未来


(メルロから滴る樹液)

茅ヶ岳の麓、明野にもやっと桜の便りが届き、本格的な春の訪れを感じられる季節になりました。畑にはてんとう虫が遊び、土筆が顔を出す姿もみられ、生き物たちは徐々に覚醒しつつあります。ブドウの樹は、剪定した枝の切り口から樹液をポタポタと滴らせています。「水揚げ」と呼ばれるこの現象は、地中の温度が上昇したことにより、根の活動が活発になってきたことの表れです。動き始めた根からは、水と共に土壌中の養分が吸収され、ブドウ樹全体に行き渡り始めているのです。

農場では、この水揚げの後、誘引(ゆういん)作業に入ります。誘引とは、枝をテープや針金などでワイヤーに固定していく作業です。特に、今の時期は昨年伸びた枝を固定するので、木質化している硬い枝を無理に曲げようとすると折れてしまいます。水揚げを待ち、枝が軟らかくなってから始めるのです。

誘引した枝には、今年のブドウの実を結ぶ枝となる芽があります。そして、その芽が芽吹くことを萌芽(ほうが)といいます。明野農場のシャルドネの萌芽は、ちょうどこのグレイス通信が皆様の手元に届く頃かもしれません。休眠から覚めつつあるブドウ・・・小さな小さな葉の重なりが徐々にほころんでいく瞬間を、ブドウ畑でぜひご覧になられてはいかがでしょう。


(シャルドネの萌芽[昨年])

■明野に甲州種を植える■

これまで明野農場では、試験的にしか栽培していなかった甲州種ですが、これからの3年間で、植栽面積を大幅に拡大していきます。この春は、植栽に必要な苗木の自家生産など、その準備段階に入りました。

弊社は、これまでも日本固有の品種である甲州種の醸造用ブドウとしての可能性を追求してきました。そして今、甲州種ワインの世界へ向けての輸出が始まるなど、甲州種を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。そのワインの品質アップがますます切実な課題となる中で、醸造面での技術レベルの向上に加えて、ブドウ栽培そのものを見直すといったアプローチが最重要だと考えています。これまでの原料ブドウは、生食用として栽培したものが醸造用へ転用されている場合が大半で、もし、最初から醸造用と意識して栽培するのであれば、その品質はこれまで以上に改善する可能性を十分含んでいるからです。弊社契約農家の一部で試みている一文字短梢(いちもんじたんしょう)栽培などは、その一例で、過去に実績もあります。

明野農場で甲州種を栽培する上で、意識的な面はもちろん技術的にも最大限の配慮をしなければ全くその意味はありません。しかし、技術といっても、前の一文字短梢栽培の例はあるものの、残念ながら日本ではその分野の研究が諸外国に比べて、著しく遅れており情報があまりありません。それは甲州種に限ったことではなく、他の欧州系醸造専用品種においてもです。明野農場では、一つの具体的な案として、高畝(たかうね)式の垣根栽培を試みようと計画しています。盛り土で作られた高畝は、水はけがとてもよく、降水量が多い日本では非常に有効な栽培法であると考えられます。

甲州種を種から育てる実生(みしょう)栽培や、現存する甲州種の中での優良な系統の選抜などはこれまで通り継続して行います。特に、実生から醸造用にふさわしい形質を持つ新たな甲州種を見つけ出すのは容易なことではありません。そもそも、種から育てた樹が、安定してブドウをつけるようになるのに8年以上もかかることがあるのです。昨年の秋、実生樹の中でブドウの糖度が20度を超えるものがありました。本格的な解析は今年も引き続き行わなければならないですが、この実りが、ゴールに向けての着実な一歩であることを期待しています。(H.N.)

2008年6月

開花

しっとりとした梅雨の雨が降りしきる中、茅ヶ岳周辺もいよいよ緑萌える季節となりました。ブドウの新梢はぐんぐんと伸び、垣根仕立ての葡萄畑にはグリーンの帯が連なる美しい光景が広がり始めています。

今年は例年よりも6日も早く梅雨のシーズンに入りました。主なワイン用ブドウの生産国と比べて、日本はとりわけブドウ生育期(4~10月)の降水量が多いといわれています。梅雨や台風シーズンの時期と重なるからです。病果が無く、より糖度の高いブドウを収穫するには、冬季を除いて雨は少ない方が有利です。けれども、日本のブドウで日本のワインを造る限り、こうした気象条件は好むと好まざるとに限らず受け入れなければなりません。むしろ重要なことは、与えられた条件下で栽培上の工夫や努力を惜しまないことだと思います。フルーツゾーンに雨よけシートをかけ、雨を媒体とする病気の発生を抑える事によって、果実を充分に成熟に向かわせる方法や、高畝や暗渠など畑の排水性を高めたりする工事は、日本でワイン用ブドウを栽培する上での技術的な工夫と努力の一端であります。

今の時期の農作業は新梢の誘引(ゆういん)。垣根式の栽培では、今年伸びる枝を地面に対して垂直に配置していきます。畝上に立てられた杭には数段のワイヤーが張ってあり、それに新梢を挟み込んでテープでとめていきます。またこの時期はブドウばかりではなく雑草の成長も旺盛です。風通しをよくしたり、病害虫を防いだりするために、畑およびその周辺の定期的な草刈はかかせません。農場では、美しく機能的な畑を維持するために、新梢誘引や草刈にと精力的に農作業を進めています。

例年、梅雨入り前かその直後に、明野のブドウたちは開花そして結実という重要な瞬間を迎えます。ブドウは、将来ブドウの実になるひとつひとつが蕾みをもち花を咲かせます。ブドウ一房で100前後の小さな花が咲くのです。品種によって開花の時期は異なりますが、いったん花が咲きはじまると一週間もかからず満開となります。満開となった葡萄畑の中には甘い香りが漂います。開花期間中、低温や日照不足などで受精がうまくいかないと結実不良を引き起こします。「花ぶるい」といわれ、着粒数が少ない粗着な房となってしまいます。また、シャルドネやピノ・ノワールなどの品種は、咲き終わりの花カスが落ちにくく、そのまま残しておくとカビが発生しがちです。収穫間際になってから灰色カビ病で収穫量の大半を失う可能性もあります。ですので出来る限り、結実後の果粒が肥大するまでに一房一房丁寧に花カスを落とすことが重要です。

開花から3ヶ月後、ブドウは収穫の時を迎えます。今年もすばらしいヴィンテージになりますよう、梅雨明けを今か今かと待ちわびる今日です。(H.N.)

2008年9月

ヴェレーゾン


(明野農場全景)

お盆も過ぎ、山梨では日中でも涼しく感じられる日が多くなりました。今、明野農場では順調にヴェレーゾン期(着色時期)を迎えています。今年はちょうどブドウが開花する頃(5月中旬から6月上旬)に、低温と日照不足に見舞われたため、品種によっては結実不良などによる収穫量の減少が予想されています。ブドウの確保が困難になり、買取価格も影響を受けるなど、ワイナリーにとってこうしたブドウの供給不足はとても厳しい状況です。しかし、その一方で、収量が自然に制限された状態ではブドウが熟しやすくなり、より糖度の高いブドウが収穫できる可能性もあるのです。

加えて、今年の7月は降雨が少なく、例年梅雨の時期から葉に蔓延するベト病の発生が少なくて済みました。多くの葉が健全なまま現段階でも維持されていることを考えると、今年のブドウの品質には期待が膨らみます。

先日、うれしいニュースが届きました。「2006グレイスメルロ」がジャパンワインチャレンジで銀賞、最優秀日本ワインの評価を頂きました。このワインは、自社明野農場で栽培されたメルロを主として生み出されました。栽培課スタッフにとっては、日頃の苦労が報われた素直に嬉しい瞬間でした。今後もより一層の探究心を忘れず、明野という土地に根ざしたブドウ、ワイン作りに邁進していきます。(H.N.)

2008年11月

期待が大きい08年ブドウ-栽培から醸造へと託されたバトン

「パチン、パチン」と鋏(はさみ)の音が畑のあちらこちらから響いてきます。収穫の風景です。枝から切り取ったブドウは、病果がないか一房一房丁寧にチェックします。もしあれば、鋏で切り落としてから収穫箱へ入れます。一箱を10キロのブドウで満たすには相当の時間がかかりますが、良質な赤ワイン用のブドウ収穫は手摘みが基本です。明野農場のような広大な敷地では、まさに人手の数が勝負です。今年のブドウの収穫量は、各品種とも大幅に減少しました。開花時期の低温、日照不足による結実不良も一因ですが、むしろ、その頃に房に感染したベト病や、収穫間際になってからの灰カビ、晩腐病などの蔓延が主な原因といえます(明野農場に限らず、甲州種を含む山梨県のブドウ全体の傾向)。

しかし、ブドウの成熟は、昨年より数日遅れたものの順調に進み、糖度は20度を超えました。例年より酸が高めで、pH(ペーハー:酸性度を示す値で小さいとより酸性)が低く、安定したワイン醸造を行うのに好条件となりました。小粒傾向で色づきも良好なことなども含め、08年のブドウは大いなる可能性を秘めています。

畑の集大成であるブドウは、収量制限の有無や区画の違いなどを考慮し、事前の果実分析の結果をもとにそれぞれの収穫日を決定します。栽培面積が広いシャルドネやメルロは、同じ品種でも数回の収穫ロットに分けます。収穫したブドウは、直ちにワイナリーへと運びます。特にブドウの状態が良い場合は収穫にも熱が入り、その思いはそのまま醸造スタッフにも引き継がれていきます。

今年の仕込みは、除梗破砕の際に混入した梗を徹底的に取り除くことに気を遣っています。外国では、高級ワインの仕込み時には当たり前のように行われる選果作業ですが、一般的に躊躇されるのは、日本での高い人件コストであります。人手と時間を費やし、さらに磨きのかかったブドウ。きっと素晴らしいワインが生み出されるに違いありません。

収穫はシャルドネ、メルロ、カベルネ・フランと終わり、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルドへと続きます。その収穫も11月初旬にはすべて完了します。主人公が畑からワイナリーへと移り、醸造場はほどなく心地よいブーケで満たされ始めます・・・

今年も明野農場の収穫は、「グレイス栽培クラブ」をはじめ多くのボランティアの方々にお手伝い頂きました。完熟まで収穫を遅らせたブドウは、病果が多くとても困難な作業になりましたが、皆様の丁寧な繕いのおかげで糖度が20度を超える充分熟した原料ブドウを得ることができました。このような結果を省みて、来年こそ更に健全なブドウ果を得られるように、皆様から応援して戴いた作業風景をしっかり心に刻みました。(H.N.)