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明野・三澤農場の今

2009年3月

甲州ブドウ、そして明野農場の未来

先日、勝沼町のとあるブドウ畑を訪れました。今年の苗の接木に用いる甲州種ブドウの枝を分けてもらうためです。途中の道幅はとても狭く、ジェットコースターのような急勾配で本当に上れるのかと不安でしたが、軽トラを運転する園主の農家さんはさすが手馴れたもので無事畑までたどり着きました。切り立つ崖の途中には、棚式の小さな畑が段々に切り拓かれていました(何ともいえぬ魅力を感じる風景でしたが、この話はまた別の機会に)。跡継ぎはいるのですか?と尋ねたところ、息子さんはいるがブドウ畑は継ぐ気はないらしいとのこと。そういえば、昨年の収穫の頃、この農家さんから収穫を手伝って欲しいとワイナリーに要請があったことを思い出しました。

これは私が直接体験した話ですが、機械化に向かない狭い農地、農家の高齢化や後継ぎ不足などは、ブドウに限らず、今日の日本の農業が抱える深刻な課題です。別のブドウ農家では、ここ数年で棚の甲州種を伐採して他の生食用ブドウに切り替えたという話もあります。これは、狭い農地で農業経営を維持するためには、甲州種よりも販売価格の高い巨峰やピオーネを栽培した方が得だという表れです。

このように、近年、甲州種の栽培面積は急速に減少してきています。このまま放っておけば、日本一の甲州種の産地は10年待たずして消滅してしまうかもしれません。この危機的な状況を食い止めるには、今、何か具体的に動き出さなければなりません。


(急ピッチで進む 新甲州畑の造成の様子)

では、我々ワイナリーがこれから先も甲州種ブドウを継続して安定的に得るにはどうしたらよいのでしょうか。まず考えられるのは、もう少し高い価格でブドウを取引して、農家に甲州種を作り続けてもらうことです。このことは、一つのワイナリーだけではなく、業界全体で考えなくてはならない大きな課題です。そしてもう一つは、ワイナリー自らが甲州種ブドウの生産に踏み切ることです。いわゆるワイナリーの自立であります。原料ブドウの生産に関しては、ワイナリーの思想や事情により各社それぞれに違った対応となるでしょう。これまでに、欧州系品種の自社農園を持つワイナリーは増えました。

けれども、甲州種となると躊躇するワイナリーが多いのもまた事実です。残念ながら、市場における甲州種ワインの販売価格はメルロやカベルネといった欧州系品種よりも安く、それがそのまま原料価格に反映されます。実際に、畑を借りブドウを生産するに至るまでの時間と経費は膨大です。欧州系品種よりも価格の安い甲州種ブドウで採算を合わせることは、とても容易ではないのです。


(新甲州畑はグレイス明野農場へ隣接します)

こうした厳しい状況はありますが、弊社ではいよいよ本格的に甲州種ブドウの自社生産に踏み切ろうとしています。明野農場において、新たな圃場を拡張し、そこに甲州種ブドウを植栽します。成園時の面積は3ヘクタールを超えますが、これは勝沼町鳥居平地区における甲州種の植栽面積に充分匹敵する大きさです。この構想の実現化の可否に、山梨の甲州種ブドウ栽培の将来を託し、歴史を刻む覚悟で挑みます。ワインコンクールなどの結果でも明らかなように、長野、山形、北海道などはすでに日本のワイン産地としての頭角を現しています。さらに、九州や中国地方のワイナリーでも努力が実りつつあります。それらの中で、山梨のワイナリーがその存在価値をより明確にしていくためには、日本で唯一の固有品種である甲州種をこれまで以上に追求していくことが肝心です。弊社は甲州種の可能性を信じています。そしてその産地を維持していくことが、山梨、強いては日本のワイナリーの使命だと考えています。3ヘクタール超という広大な大地に甲州種を植えることには、「明野を日本ワインの産地に!」との意味が込められているのです。(H.N.)

2009年4月

明野農場 8年目の春

おかげさまで、明野農場は開園8年目を迎えました。この間、グレイスメルロ06やグレイスシャルドネ07など、農場のブドウから造られたワインがいよいよ本格的に商品化されつつあります。けれども、明野農場の真価が問われるのはこれからだと言えます。ワインには「ヴィンテージ」という概念があるように、その品質はブドウ収穫年の気象条件に大きく左右されます。例えば、昨年は幸いにも台風上陸ゼロという好条件に恵まれ、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンなどは糖度が23度を超える当たり年となりました(北海道のケルナーも過去最高の熟し方をしましたが、これは開花結実期の天候が悪く着果量が少なくなったことも要因の一つです)。これから先、ずっと昨年度のように天候が味方してくれる年ばかりなら幸いですが、天候に恵まれない年も必ずあるでしょう。その時、ブドウの出来をあきらめてしまうことは容易な選択です。けれども、たとえ不利な環境下においても、ブドウの品質をできるだけ損なわないよう収穫することが、我々栽培課スタッフの真の仕事なのです。「ワイン造りはブドウづくり」とはよくいったものです。これからも、品質の安定したワインを造り続けるためには、明野農場においても、もう一段高いレベルのブドウ栽培が求められているのです。

農場では、この4月から甲州種専用の圃場を新たに拡張しました。ブドウ栽培に適するよう、圃場を整備する段階で様々な設計を施しました。例えば、土壌改良が十分なされるように、畝は65cmの高畝にしました(高畝とは簡単に言うと盛り土です)。


(2005年から実施の高畝栽培の様子)

春~秋にかけて農場に専ら吹く南風を遮らないよう、畝を南北方向に配置しました。さらに南面方向に約5%の傾斜をつけることで、水はけを改善し、太陽の恵みを十分活用できるようにしました。これらはすべて、甲州種ブドウ、強いては日本のブドウをさらにレベルアップする為の試みなのです。

ブドウの芽吹きとともに、今年もそろそろ空模様に一喜一憂する日々がスタートします。それは農場のすべてのブドウを収穫し終える日まで続きます・・・(H.N.)

2009年6月

天空に向かって

ブドウ畑では今年の新梢が日に日に伸びてきています。週末をはさむと畑の様子が一変していることもしばしばです。ブドウは、萌芽からしばらくの間は、前年に蓄えておいた貯蔵養分を用いて生長します。貯蔵養分は、主に、萌芽のためのエネルギー源と、その後に展開する葉の形成や発達に利用されています。この間、葉の展開や新梢の伸びは比較的ゆっくりと進みます。しかし、貯蔵養分を利用して展開した葉々が十分に発達をすると、そのスピードは急激に増してきます。この瞬間こそ、ブドウが生長に必要なエネルギーを自ら生産し始めた証です。始めに展開した葉々は、その上位の葉が形成および展開するために必要なエネルギー(光合成産物)を供給する器官、いわゆるソースとなります(上位の葉をその受容器官、シンクと呼びます)。そして、それら上位葉もある一定の段階まで成熟すると、また新たに展開し始めるさらなる上位の葉のソースとなるのです。それはまさに拡大生産のサイクルのようで、新梢の葉枚数は加速度的に増えていきます。ブドウの生育スピードが増すにつれ、農作業の方もいよいよ本格的に忙しくなってきます。

今の畑での作業は主に誘引です。垣根式栽培の場合は、ぐんぐんと伸びる新梢を垂直に配置し固定していきます。これは、新梢同士が重なりあわないようにし、個々の葉に太陽の光を効率よく当てて光合成を活発に行わせるためです。また、風通しをよくしてカビなどの病気の発生を防ぐ上でも重要です。新梢の伸び方には、品種により若干の違いが見られます。芽吹きの早いシャルドネは特にそうですが、甲州やカベルネ・フランなどもあっという間にトレリス(垣根設備)の最上段に達してしまいます。従って誘引作業はそのような品種から順番に行っていきます。さらに芽かきという作業も現在進行中です。冬の剪定で今年度の芽数はある程度決定していますが、栄養分を集中させるために、これから伸びつつある新梢の中から選りすぐりの枝を必要な数だけ残していきます。一本の新梢には大体2房のブドウしか実りません。従って、芽かきが完了した時点で、今シーズンの収穫量はほぼ決定されてしまいます。計画された収穫量に調整しながら、芽かき作業を慎重に進めていきます。


(甲州種の畑から)

今年新たに植えた甲州種の苗が順調に生育しています。本格的に収穫できるのは早くて再来年以降となりますが、自社管理の畑からはたしてどんな甲州種ブドウが得られるのか今から期待が膨らみます。そして、明野農場がより上を目指した素晴らしい葡萄畑になるためには、そこで働く人間がブドウ達以上に大きく成長していかなければならないと感じています。グレイスファンの皆様のご期待に添えるよう今後とも努力してまいりますので、相変わらずのご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。(H.A.)

2009年9月

天候不順を覆して良好な収穫を予想

今年は7~8月にかけて、全国的に梅雨の長雨や集中豪雨、日照不足、冷夏などの天候不順とその影響による野菜・果実・米の不作・価格高や品質低下、さらには夏物商品の消費不況などが大きな社会問題にもなりました。ブドウやワインの出来を心配して下さるお客様からの声も多く聞きます。

しかし、現実には大きな問題はないどころか、今年最初の自社農場の収穫となる勝沼・鳥居平農場のメルロ(9月6日収穫)などは、昨年より1週間ほど成熟が早めのうえに、品質的にもここ数年のなかでは出色の出来栄えです。

これは、開花~結実期である5月末~6月初めの天候が良かったので着果量が確保されたこと、果粒肥大期(7月末まで)の日照時間は平年比8割程度であったものの雨量は思ったより少なかったこと(6割)、ベレーゾン以降の成熟期は初旬こそ良くなかったものの8月全体としては、雨量は4割・日照時間は平年並みとよくなったこと、ブドウにとっては日本の夏は暑すぎで、最高温度もとくに最低温度は平年より低いぐらいのほうが適していること、などが影響していると思われます。


■ミサワワイナリーのドメーヌ化へ大きく前進■
明野農場についても、本格的な成熟はこれからですが、やはりブドウの成熟は早めで、9~10月の天気予報も良好なので、質・量とも大いに期待できそうです。

明野農場は2002年に開園して7年目にあたる昨年で第1期8haの圃場への植え付けを完了させました。成園化率は約8割となり、品質的にもグレイスメルロのジャパンワインチャレンジ受賞やグレイスシャルドネの『神の雫』での紹介など評価が高まってきました。
しかし、これはほんの第一歩にすぎません。明野農場の第一の使命は、ミサワワイナリーと一体となって、日本における本格的なドメーヌをつくりあげることです。欧州系ブドウの生産量を安定的に確保し、自園ブドウによる商品ラインナップを作り上げなければなりません。第二の使命は、高品質ワインの生産です。今年はその一歩を高畝区からのプレミアム赤ワインの生産とシャルドネプレミアムロットの仕込みとして踏み出します。

そして第三の使命が今年4月の甲州種植樹にはじまる第2期3haの高畝新圃場の建設―自園産甲州種ワインの確立です。農園スタッフは全社員と協力しながら、これらの使命を果たすため全力でがんばります。(H.A.)

2009年11月

素晴らしいヴィンテージ

9月8日にスパークリング用のシャルドネから始まった明野農場の今年の収穫は、11月1日のカベルネ・ソーヴィニヨン及び甲州で完了しました。今年のブドウは質・量とも例年を大きく上回る出来で、画期的な年となったことを報告します。

別表で勝沼のアメダスデータを示したように、今年の天候は例年に比べて、栽培期間全体の降水量が少なく、日照時間が長いものでした。とくに6~9月の雨が少なくて病気が防げたこと、8~10月の日照時間が長い上に夜温が低く昼夜の寒暖差が大きかったのでブドウがよく成熟したことが特筆されます。

その結果、ほとんどのブドウが糖度22~24度という補糖不要な水準に達しました。酸とのバランスや色づき、コクも良好です。ワイン作りはこれからが本番ですが、2009年がビッグ・ヴィンテージになる可能性は大きいといえるでしょう。

■明野農場の巨大な可能性■
また収穫量が、2002年の開園以来8年にしてほぼ成園の水準になったことも重要です。これによって、ミサワワイナリーが原料ブドウを全て自園でまかなう「本格的ドメーヌ」として確立する道が切り開かれたのです。

また各品種の収量が増し収穫のロットが増えたことは、摘房による収量調節や房周りの除葉の程度差による成熟タイプ差など栽培方法のヴァリエーションと相まって、多様なタイプのワインづくりとアサンブラージュによる複雑な総合を可能にしました。今後、よりプレミアムなワインを生み出すことに寄与するでしょう。

最後に、今年4月に新耕区高畝畑に植樹した甲州の苗が順調に生育し、来年の春には結果母枝として配置できる枝が確保できたこともお知らせしておきます。(H.A.)