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明野・三澤農場の今

2011年1月

落葉から休眠へ・・・2011年ヴィンテージへの序章

12月に入り葉々を落としたブドウ樹は一足先に冬支度を整え終え、それを見届けるように明野農場の眼前に迫る南アルプスは雪帽子を被り、八ヶ岳からは冷たい風が吹き降ろす厳しい冬が到来しました。

落葉果樹であるブドウ樹の年間生育サイクルは、春~秋の生育期に最大限の光合成生産を行い、次なる命となる果実と種子を成熟させると同時に、その年に生産した養分を樹体内に蓄えつつ翌年の花芽を分化、さらに新梢を木質化し(登熟)させます。そして休眠期である冬は、それら翌年の生育を司る、生理や組織の変化を終えた後のエネルギー浪費を防ぐこと、さらに一定期間の寒さを受けることで休眠からの覚醒を促すという大切な季節なのです。


(イメージを膨らませながら進む剪定作業)

そして明野農場では休眠期での一番大切な作業である剪定が始まりました。様々な樹木で行われる剪定という作業ですが、植木や花などの観賞植物では、視覚的な美しさを維持する為、一方ブドウを始めとする果樹の剪定は機能面から行うものと言えます。

ではもし剪定をしなかったらブドウ樹はどうなるでしょう?結果その年に延びた新梢の節々に付いている芽の殆どからは萌芽しますが、その枝は細く弱々しいものになり、果実も小さく熟さないなど、私達が求める果実品質とは程遠いものとなります。それ故ブドウ栽培において剪定は必須であり、収量を落とさず品質を維持する為に芽数を調整することを目的に行われるのです。

しかしブドウ樹が他の果実と大きく違うのは、たった数ヶ月の生育シーズン中に何メートルも新梢を伸ばす蔓性植物であるという点です。従って剪定する枝の割合も非常に多く、その年に延ばした新梢の実に80~90%(重量にして)もの部分を切り落とすのです。このダイナミックな剪定が、収量を落とさず品質を維持し樹勢をコントロールするという、長期に渡るブドウの安定生産に必要な、機能的な樹形を維持することに繋がるのです。


(二度目の冬を迎えた高畝式垣根甲州)

また広く知られているよう剪定には二つの方法があり、根元から1芽又は二芽残すのを短梢剪定、4芽以上残すものを長梢剪定と呼び、それらを組み合わせて作られる樹形を、仕立て又は整枝型と呼びます。そして世界中に様々は仕立てがあり二つに大別することができます。一つは生食用に多く日本でも一般的な棚式、もう一つはワイン用ブドウ産地で多く採用されている垣根式、さらに垣根式の中にはVSP(ヴァーティカル・シュート・ポジショニング)、GDC(ジェネバ・ダブル・カーテン)、リール、レイヤーなど様々な仕立てが開発されています。

私達の明野農場では最も樹体をコンパクトに仕立てられる垣根式のVSPを採用しており(2011年より一部GDCを採用予定)、これにより枝に回る養分を房に集中させ、果実の凝縮感を高めることができます。しかし生育期間に雨が多く、土壌が肥沃な日本においてVSPを好適樹相に栽培するには、適切な施肥や余分な土壌水分の排水などの圃場管理、そして樹の状態を的確に把握し、残すべき芽の数や位置を決めるといった剪定技術が必要になるのです。

いよいよ到来する本格的な冬を目前に、来年の生育をイメージしながら行うこの剪定作業を続けている今も、ブドウ樹の中では着々と2011年ヴィンテージの準備が進んでいます。

2011年2月

剪定作業も終盤へ

大寒を過ぎてもなお厳しい寒さが続いています。それをつくり出しているのは典型的な冬型の気圧配置。南アルプスや八ヶ岳の山岳気候の影響を受けつつも太平洋側気候に属する明野では季節風が強い晴れの日が多く、この冬はまだ一度もまとまった雪に覆われていないことで、寒さ中でも剪定作業は順調に進んでいます。


(短梢・長梢を組み合わせたメルロの樹)

前号で剪定の目的や仕立て(整枝型)についてお話ししましたが、明野農場で採用しているVSP(一般的にはこれを垣根式と呼んでいます)の中でも、ギヨ仕立て(長梢剪定)とコルドン仕立て(短梢剪定)は広く知られています。この二つの仕立てはそれぞれに長所・短所が有ります。従って必ずしもどちらが良いというものではなく、品種の特徴や樹勢、目指すべきブドウ品質や収量、さらには樹間といった要素を考慮し選択しています。明野農場でも区画・品種に応じどちらかをメインに据えた上で、現実にはブドウ樹一本一本の状態を見ながらそれらを組み合わせている場合が多く、それにより好適樹相を実現しているのです。よって海外の例を見るような一律のギヨやコルドンではなく、ギヨメイン・コルドンメインと呼んだ方が正しいかもしれません。


(高畝区の剪定作業)

また好適樹相とはすなわち中庸な樹勢とも言い換えられ、果実の品質を大きく左右することから、“樹勢コントロール”がブドウ栽培において重要なのです。そしてその樹勢は土壌の排水性・養分・台木との相性・樹間とともに樹一本当たりの新梢数《剪定により残される芽数に依存する》などに影響されることから、剪定がブドウ樹の管理の中でもとりわけ大切な作業と言うことができるのです。

シャルドネ・メルロ・カベルネフランから甲州・カベルネソーヴィニオンと剪定作業は終盤を迎えつつありますが、来るべき芽吹きに備えての準備はまだまだ続きます。(F.S.)

2011年3月

高畝式垣根甲州区画もいよいよ完成へ

全く降水量のなかった1月から一転して、2月に入り通過した南岸低気圧の影響を受けた明野も大雪に見舞われました。そんな悪天候の間を突きながら、3ヶ年計画で行われてきた高畝式垣根甲州の畑整備も急ピッチで進み、いよいよ最終段階を迎えようとしています。


(メルロの収量調整がすすんでいます)

毎年冬期には、設備の老朽化や不具合に伴う改修や、より効率良く栽培する為の改良工事が行われますが、この冬の大事業は、来る4月に苗植えを予定している、前述した高畝式垣根甲州のトレリス建設と暗渠埋設の工事なのです。


(垣根トレリス建設中)

このトレリスとは蔓性植物であるブドウを垣根や棚といった整枝形に仕立てる為の設備を差しますが、それぞれの栽培地や品種・栽培の考え方によって柱やワイヤーの配置、使われる資材の形状・材質などに違いが生じてきます。栽培の基本形になるこのトレリスを設計・建設すること、さらにその土台となる垣根の畝方向や間隔などを決めることは、その後の栽培条件を大きく左右する重要な仕事です。


(魚肉ソーセージ?いえ、これが暗渠になります)

また暗渠とは土中に管や砕石を入れ、圃場の排水性を高めることを目的としており、特に醸造用のブドウ畑では多く採用されています。明野農場ではこの暗渠を排水性に優れた高畝式の谷間に埋設しています。そうすることで、高畝式のさらなる排水性の確保とその永続性を狙っています・・・《高畝部は排水性が高いが、その下部は高畝部からの水分が溜まりやすくなります。根がこの高畝の下部に根が到達してしまうと、せっかくの高畝の高排水性の恩恵を受けづらくなってしまう為、これを防ぐことを目的としています》


(繋げて埋めて戻せば完成)

平素穏やかな明野農場ですが、この時ばかりはパワーショベルが入り、エンジン音を響かせています。私達にとっても慣れない土木作業ですが、未来の明野農場に思いを馳せつつ、普段にはない疲労感を受けながらの作業はもうしばらく続きます。(F.S)

2011年4月

ブドウの水上げと苗づくり・・・春の訪れ

2月中旬~下旬にかけて日中の気温は高めに推移し、早熟のシャルドネやメルロでは剪定した枝の先端が湿り始めました。いわゆる水上げとわれるこの現象は通常では3月に入ってから始まるものですので、今年のブドウ樹の目覚めは早すぎることを感じさせました。しかし3月に入りその温かさはどこへやら、冬の寒さが戻ってきました。


(ぶどう樹の根元には春の花が咲き始めました)

彼岸を過ぎた今でも、まだ肌寒い空気に包まれている明野農場でも、ようやくホトケノザやオオイヌノフグリなどの春の草花が咲き始め、それに合わせて停滞状態だったブドウの水上げも本格的に始まり、萌芽へ準備は勢いを取り戻しつつあります。

水上げが始まると硬く登熟したブドウの枝(結果母枝)は柔軟性を持ち始め、曲げやすくなります。そのタイミングを待って始まるのが結果母枝の誘引作業。今年の新梢の基になる芽を持つ【結果母枝=昨年の新梢】を水平に張られたワイヤーに誘引しVSPの基本型をつくります。

またそれに先立っては苗作りが行われました。

弊社では将来の明野農場の基礎となる苗の調達の多くを、自社で作ることで賄っています。これらの苗は拡張した畑への植栽用として、また虫害により枯れた樹の補植用、さらにはより明野農場に適したクローンへの改植用として来春植えられる予定です。


(台木に接ぎ木されたカベルネ・ソーヴィニヨン)

また今年作った苗は青苗と呼び、一年間大事に育てられます。三つ子の魂百まで・・・と言いますが、ブドウ(植物)も人間と同じように小さい頃は大事に育ててやらなければならないのです。今年はカベルネ・ソーヴィニオンを中心に甲州、メルロ、ソーヴィニオン・ブランを1350本。それぞれの品種とクローンの特性、そして台木との相性などを考えながら接ぎ木しました。

今年の桜の開花は平年並みという予想が出ています。間もなく本格的な春を迎える明野農場では、いよいよあと1ヶ月弱に迫った萌芽を迎える準備を整えています。(F.S.)

2011年5月

まもなく萌芽が始まります

明野農場では通常4月10日頃から早熟のシャルドネや、ソーヴィニオン・ブランなどが萌芽を迎える為の芽の膨らみが確認でき、15~20日頃に萌芽を迎えます。昨年は4月に低温に見舞われたこともあり、萌芽が遅く、シャルドネで4月29日でした。そして今年は4月28日の段階で脱包が進み、葉が開きかけている状態です(萌芽と言うにはやや早いという状態))。これで昨年とほぼ同日、萌芽の早かった一昨年に比べると約2週間の遅れとなりました。


(萌芽目前のシャルドネ)

私達がその年の萌芽を予測する為の一つの指標として桜の開花があります。先月号でも触れました通り、今年の桜の開花は、甲府では平年と同日の3月29日でした。これに沿って予測する今年のブドウの萌芽は平年に近い4月20日頃。そしてそれを裏付けるように3月~4月にかけての気温上昇の推移(下図)も順調でした。しかし一つ懸念されたことは、この冬~春までの極端な降水量の少なさ、実際に1月~4月15日までの降水量は平年比46%、昨年比33%と、これが萌芽の遅れにつながった理由として考えられます。


(甲州GDCの苗植え中)

そして萌芽後に気がかりになってくるのは、萌芽率や芽の強弱といった萌芽の状態です。

この萌芽の状態は、昨年のブドウ樹の健康状態や剪定技術などが複雑に絡み合う為、正しく評価すること自体が難しく、尚且つ大事なことでもあります。そしてその評価をすることとは別に、実際の栽培において大切なことは“良い萌芽”〔萌芽率が高く、芽が綺麗に揃っている〕であること。これが今年の作柄をも左右すると同時に、今後の栽培管理のし易さにも繋がってくるのです。

また萌芽に先立っては甲州種を中心とする苗の植付けが行われました。高畝式VSPとGDC(ジェネバ・ダブル・カーテン)をメインに約1000本。

これで明野農場の全体像はほぼ完成形へと向かいます。(F.S.)

2011年6月

萌芽から芽掻きへ

萌芽から一ヶ月が経ち、日に日に新梢が伸びて行くなか、関東甲信越地方は5月27日頃に早くも梅雨入りしました(平年より12日、昨年より17日早い)。先月号にてお伝えしたように、極端に降水量が少なかった冬~春の後、5月の降水量は台風2号の影響もあり平年比340%と多雨となっています。その反面日照時間も平年比96%、平均気温と最高気温の平均もやや低めということからも晴天か雨かという極端な天候であるというのがこれまでの特長です。


(日に日に伸びる垣根甲州の新梢)

ただ今明野農場では伸びてゆく新梢を横目で見ながら、芽かきを急ピッチで進めています。芽かきは冬の剪定と対になる作業であり、品質・収量を最適なバランスに保つ為に房数≒新梢(芽)数を調整・確保することが大きな目的です。その上でその樹の樹勢にあわせた芽数の調整、将来樹形をつくってゆく上で必要になる芽の選択、果房回りの風通しや果房への日射を遮らない新梢の配置(成熟期に房へ日光を当てることで成熟が進む)などを考慮し、不要な芽を除去してゆくのです。

今年は前述のした冬~春の降水量の少なさが影響した為か、決して良いとは言えない萌芽状態(長梢でやや萌芽率が低い上、芽の強弱の差が大きい)となっていますが、その中でも“最良”の芽かきとなるよう作業を進めています。


(雨の合間を突いて進む芽掻き作業)

一般的にブドウ(特に醸造用)の生育にとって好ましいのは、冬~春の適度な降水により萌芽が揃い、その後は降水量が少な目であることで新梢の伸びが抑えられ、また病気が蔓延しにくいという条件です。今年のこれまでの気象条件はこれとは相反していますが、その中で私達が行うべきことは日々の細かな観察と先手先手の防除や栽培管理です。

そしてこのような条件下でも品質向上を達成する為には、日本の気候風土にあったブドウ栽培技術の向上が必要であり、それを目指して行くことが私達の大きな使命です。言い換えれば悪い条件の年には、それだけ技術向上のチャンスがあるのだということを、心に留め今シーズンも栽培管理に努めて参ります。(F.S.)

2011年7月

花から果粒へ

畑の作業は芽かきが終わった後、誘引・房回りの副梢取り・雨除けシート張りへと続く収穫期と並んで一年の中で最も忙しい時期へと突入してきました。一方ワイナリーでは秋の仕込みを見据えて醸造設備や樽の更新・整備などが行われています。またこの時期は瓶詰め作業も一段落しつつあり、私達栽培スタッフがそれら瓶詰め直後のワインを利くのもこの時期ならではです。明野農場生まれのブドウがどのようなワインとなってリリースされるのか、栽培者としての立場からも目が離せません。

そんな中2011年の作柄を大まかに予想しながら、仕込み計画などを話す機会が増えてゆき、収穫へと続く一連の生育ステージと作業計画をイメージし直しているこの頃です。


(梅雨の日の誘引作業)

三澤農場のブドウ樹はただ今、開花から落果そして果粒へと、日々見た目にもブドウの生理の上でも劇的な変化を遂げています。それと同時に花から果粒へと細胞が生まれ変わったこの時期は幼果期と呼び病気に感染しやすく、梅雨の降雨によりさらにそのリスクが高まる要注意の生育ステージでもあります。幸いこの梅雨は入りこそ早かったものの、その後記録的な暑さの好天が続いている為、結実も程よく、病気も殆ど出ていません。

しかし高温・高湿度が続く日本の梅雨~夏はブドウにとって過酷な状況であるとことは間違いなく、この先また梅雨空が戻るとの予報もあります。その年の品質・収量を大きく左右するこのステージで気を抜くことなく、冒頭に述べた誘引【新梢を適切な位置へ配置し、光合成効率を高める】・房回りの副梢取り【風通しを良くし、病気を防ぐ】・雨除けシート張り【降雨による病気への感染を防ぐ】などを着実に行うことが、秋の豊かな実りへと続いてゆくのです。


(緑枝接ぎ 甲州種の萌芽)

また今年から数ヵ年計画で山梨県果樹試験場、県ワイン酒造組合と県内ワイナリーが協力して行われる甲州種の優良系統選抜の事業があります。その第一歩として緑枝接ぎと呼ばれる、既に植栽されている台木への接ぎ木が行われています。弊社では以前から独自に系統選抜や実生栽培を行ってきましたが、その流れがより大きな流れとなって、関連機関やワイナリー同士が協力し甲州種の品質を上げてゆこうという機運に繋がっています。地道な作業ではありますが、その先にある甲州種の可能性に期待を膨らませ、責任を感じつつ作業を進めています。(F.S.)

2011年8月

間もなくヴェレーゾンを迎えます

4月末の萌芽から3ヶ月、その間猛烈な勢いで枝葉を茂らせ、そして開花~結実~果粒肥大させてきたブドウ樹も間もなくヴェレーゾン、そしてそれに続く成熟ステージを迎えようとしています。

ここ1月程の天候を見ると、平年より2週間近くも早く梅雨が明けたこと、その後の記録的な猛暑が続いたこと、そして各地に記録的豪雨をもたらした台風6号襲来などが特筆されます。それぞれに特徴がある年の平均により生み出される“平年値”、そしてそれと対比する為の“平年比”。平年と比較することそれ事体は、大きな意味を持たないかもしれませんが、今年もまた各地で平年を上回る極端な天候が続いています。

この極端な天候に逆らわず、むしろいかに味方につけ栽培管理をしてゆくのかが私達栽培スタッフが考えるべきことです。


(メルロの収量調整がすすんでいます)

山梨県北西部に位置する三澤農場では、通常ブドウの開花時期は梅雨の真只中にあたり、結実にとっては決して恵まれた条件とは言えません(標高のやや低い勝沼地区と比べると10日~2週間の遅れ)。さらに今年の梅雨の降雨量は平年比(133%)と数字上はやや多雨でした。しかしながら梅雨入りが平年より2週間近く早かったこと、降雨が梅雨入り直後に集中していたこと、また降雨が続かなかったことが幸いし、極端な花振るい(結実不良)は起こらず、むしろ適度に房が小さくなったことで醸造用ブドウにとっては好都合となりました。そして梅雨の後半には晴天と猛暑が続き、そのまま早い梅雨明けとなったことも、病害リスクの低下、果粒の小粒化に繋がる好影響だと言えます。その後台風6号による連続降雨が心配されましたが、これも関東甲信地方からは遠ざかる進路をとったことで、大きな影響を受けずに済みました。これらの経緯により2011年ヴィンテージはこれまでのところ目立った病害もなく、小房・小粒傾向と理想的な状態で生育していることをご報告いたします。


(大幅な収量増が見込まれる高畝式垣根甲州)

現在の畑の作業は最終的な品質・収量を決定づける収量調整(1枝当たりの房数の制限と房サイズの調整)の真最中です。当初計画していた雨除けシート張りの作業を後回しにし、例年より早めに収量調整を行っていますが、その背景には早い梅雨明けにより病害リスクが低下したこと、好天と猛暑によりブドウの生育が萌芽の遅れを取り戻していること、さらに赤系品種の着色不良を回避する目的があります。この収量調整とは私達がブドウの成熟を手助けしてやるのと同時に、ワインメーカー(醸造家)と意思を統一し、目指すべき品質と収量のバランスの中で各収穫・仕込みロットを完成させてゆく為の重要な作業でもあります。

スパークリング用のシャルドネ収穫まで早や1ヶ月半。皆様に最高のご報告が出来るよう、天候を味方につけるべく感性を働かせ、ブドウ樹との対話を続けます。(F.S.)

2011年9月

もうじき収穫!着々と成熟が進んでいます

お盆過ぎからの早すぎる秋雨前線の南下による連続降雨、さらに台風12号の接近と天気予報から目が離せない日々が続いています。

時として厳しい天候の中でも、ブドウの成熟は着々と進み、それを助けるべく行われてきた雨除け張り、さらに鳥獣害からの対策と摘房・房づくりを加えて総仕上げとも言える作業が進んでいます。


(晴れ間が続きますように)

例年の収穫は9月上旬になりますが、スパークリングワイン用のシャルドネのロットから始まります。それに合わせ、ブドウの成熟度合いの基準となる果汁分析を行います。まだ少数ロットのサンプリングですが、今年の果粒はやや小粒の傾向であり、シャルドネの成熟は平年並みからやや遅れています。

また赤系品種の成熟については色づきから判断し、こちらも全体的にはやや遅れている中で、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンは早いという特異的とも言える特徴が出ています。それを印象づける事象として本来ならヴェレーゾン期には、メルロとカベルネの間には明確な色づきの差があるのですが、今年は殆ど差がないという逆転現象が起きています。

今の段階で言えることは、収穫と仕込みのスケジュールが例年とは違ってくるということであり、小まめな果汁分析と観察が求められます。


(色づきが進むカベルネ・フラン)

その一方で通常10月初旬ころ成熟のピークを迎えるメルロにとって、熟期が遅くなる=10月の安定した秋晴れの中で、ギリギリまで収穫を遅らせブドウを完熟させるとことで、例年よりさらに熟度の高いメルロが収穫できる可能性が高まります。

これからも良い天候に恵まれ健全な成熟が進むことを祈るばかり。いよいよ1年の集大成となる収穫が始まります!(潮上史生)

2011年10月

秋晴れを期待して

収穫が進んでいます!という出だしで始まるつもりだった今月号ですが、2011年のブドウの成熟とそれを育む自然条件は私達の思惑通りにはさせてくれないようです。

昨月号にて早熟品種(シャルドネ・メルロ)では成熟が遅れていることはお話しました。そしてその後1ヵ月の間に台風12号と15号が立て続けに日本列島を縦断し各地に多大な被害をもたらしたことは周知の通りです。


(収穫を待つシャルドネ)

同時にそれはブドウ達にとっても厳しい環境に晒されてきたことに他なりません。この影響は言うまでもなく光合成量の低下による糖度上昇の鈍化、さらに根から水を吸い上げることによる果粒の肥大⇒果汁の薄まりに繋がり結果的に成熟の遅れとなったのです。

そんな中での収穫は熟度を絶対条件とはせず、むしろ酸の豊かさやフレッシュな果実味を重視するソーヴィニヨン・ブランやスパークリング向けおよびセレナ向けのシャルドネまでに留まり、現在までに全体の約1/7、量にして7.2t程となっています。

ブドウの収穫日の決定は糖度や酸度、それらのバランス、pH、そして最終的にはワインメーカーの三澤彩奈がブドウを“テースティング”して数値には表れない熟度を官能チェックして決められます。前述の早熟品種については全体的にまだ糖度・凝縮感が足りないことから、セレナ向け以外で残ったロットのシャルドネおよびメルロの収穫は早くても10月第1週、遅いものでは10月中旬以降にまで収穫時期を引っ張り高い熟度を目指してゆきます。


(成熟を進める垣根甲州)

その一方、中晩熟の甲州、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルドの成熟はこの悪条件の中にあっても糖度上昇が順調でありながら酸も豊富に残り、更に着色も良好である等、高いポテンシャルを持っていると言えます。それら中晩熟品種の中にあっても特に気に掛けているのが09年に植栽した高畝式垣根甲州です。3年目の今年、殆どの樹が成木に近い枝数になり、収穫量が大幅にアップすることも重要ですが、品質的にも果粒が小さく甲州種特有の皮と身の間の渋みが穏やかで、厚みのある果汁が確認できています。

今年の自然条件の中で早熟品種と中晩熟品種の間になぜ成熟スピードの差が生まれたのかについては原因の解析が必要ですが、いずれにしても植物と自然との関係は、人間が立ち入ることのできる領域を超えているのかもしれません。9月末を迎えた今、三澤農場はようやく安定した秋晴れを迎えつつあります。爽やかな秋風の中収穫を待つブドウ達をプレミアムワイナリーツアーにて是非ご覧にお越しください。(潮上史生)

2011年11月

過密スケジュールと厳しい選果を乗り越え、収穫を終えました

11月5日高畝式のカベルネ・ソーヴィニヨンを最後に、三澤農場2011年の全ての収穫を終えました。


(秋晴れの中での収穫)

今年の収穫期、特筆すべきは10月2日のシャルドネ後半の収穫から、最後の11月5日の収穫まで、雨などにより収穫をしなかったのが僅か6日のみという、三澤農場始まって以来とも言える過密スケジュールとなりました。その理由はこれまで再三お伝えしたように、多くの品種で成熟のタイミングが重なったこと、さらに房枯れ症という生理障害(気候的要因と養分吸収の不具合により発生すると言われていますが、はっきりとした原因は不明)が多発し、それに由来する病気の発生などが絡み、品質を維持する為に例年以上に時間を費やし手入れを行ったことによります。

この為に収穫量は昨年に比べ大きく減少してしまいましたが、不良果を混入させないという厳しい選果の結果、それを潜り抜けたブドウは特に晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルドにおいてワインの出来が大きく期待できる品質となったことをご報告いたします。


(不良果を徹底的に除去し収穫されます)

又今年も多くのボランティアの方々に収穫の応援をしていただきました。収穫という私達栽培スタッフにとって最も大事な作業を、ワインそしてブドウへの並々ならぬ情熱をもって共にして頂きましたこと、貴重なお時間をその為に費やして下さいましたことへの感謝をこの場を借りてお礼申し上げます。(潮上史生)

2011年12月

ブドウ畑の”循環”

秋から冬へと季節が移ろう中ブドウ樹は紅葉を終え、その葉は全ての養分をブドウ樹に託し、畑へ戻ってゆきます。そして真冬に行われる冬季剪定では今年延ばした新梢の9割程を切り落としますが、その切り落とされた枝もまた細かく粉砕され畑へと戻ってゆきます。


(トラクターから肥料を施す。来る年へ向けての土造り)

これら畑へと戻されたブドウ由来の有機物は土壌微生物の栄養源となる他、土壌の小動物による摂食・粉砕、さらに土壌微生物による分解を経て、最終的に無機物へと変換されます。このような過程を経て再びブドウ樹が養分として吸収してゆくのです(極低分子の有機物も吸収すると言われていますが)


(これから施させる堆肥)

こうしてブドウ畑の循環は連綿と続いてゆきますが、一方では降雨などと共に土壌から亡失し易いカルシウムやマグネシウム更には窒素などの成分もあり、これらの失われた成分は“施肥”という形で土壌に補給されます。この施肥の方法や時期は様々であり、それを含めた土づくりをどのように行うかは、ブドウ栽培にとって最も重要であり且つ奥深いものです。三澤農場では今この“施肥”を土壌分析データをはじめ、過去数年間のブドウの出来や樹の状態を推し量りながら慎重に進めています。見方を変えれば“施肥”はブドウ畑の大きな循環の中に私達の知恵と意思を注ぎ込むことでもあり、翌年以降の更なる飛躍へのアプローチでもあるのです。(潮上史生)