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明野・三澤農場の今

2013年1月

寒さの中、剪定作業を進めています

記録的な寒さとなった12月、この後も平年より低い気温が続く予報が出ています。ブドウ樹にとっても作業をする私達にとっても厳しい環境の中、三澤農場ではいよいよ剪定作業が始まりました。

醸造用ブドウ栽培での一般的な垣根仕立て。この仕立てのメリットは一樹あたりの収穫量を制限できること(密植が可能な為)と、樹自体をコンパクトにすることで自らの養分消費を少なく出来る点にあり、生食用ブドウ栽培で用いられる棚式栽培に比べ、一粒一粒の果実の凝縮度を高めることが可能になります。その特性を生かしつつ更に高品質な果実を得て、尚且つ収量を安定させる為には、適切な樹勢での新梢数とその間隔が必要になります。そしてその基となるのが剪定により残される結果母枝(前年の新梢)です。


(剪定中によく見かける『もずのはやにえ』。昆虫は良く見かけますがカエルは初めて!)

その垣根仕立ての中でVSP(Vertical Shoot Positioning)は世界的にも主流を占める仕立て形です。VSPの中には短梢剪定をメインにするコルドン方式と長梢剪定をメインにするギヨ式がありますが、いずれの方法も品種や区画の特徴、それまでの生育、栽培方針、樹それぞれの問題点の有無などを考慮しながら、適切な結果母枝を選ぶことが剪定の第一段階になります。その上で一樹当りの芽数が適正になるように、結果母枝の長さを規定し剪定してゆくのです。

どのような世界にも基本と呼ばれる所作・方法・形が存在します。剪定に於いても基本という形が存在しますが、自然物であるが故に2つとして同じ形にはならないのが果樹の剪定です。ブドウ栽培において最も頭を使いながら行うのが剪定作業。寒さが続く三澤農場の渇いた冬空に、まだしばらくは剪定バサミの高い音が響きます。

(潮上史生)

2013年2月

寒さの中続く剪定

気象を占う諺に「青山(せいざん)に雪降れば、冬暖かし」というものがあります。「青山」つまり、まだ紅葉も始まっていないような青々とした山に雪が降る、そんな雪の早い年は暖冬になるというのです。

昨年の9月12日、三澤農場では最高気温が30℃に達し、いよいよ収穫が本格化しようとしていた時、富士山には平年より18日も早く初冠雪をしました。まさに暖冬の兆しを窺わせていた秋口ですが、どうやら今年の冬に限ってはこの諺は外れているようです。12月に続き1月も平年を下回る厳しい寒さとなり、気象台の1か月予報でも気温の低い予想が出ています。積雪(降水量)は平年並みですが、寒さのせいで積雪はなかなか解けない中、栽培スタッフは後半に差し掛かった剪定作業を続けています。


(朝日と白金に包まれた甲州種畑での剪定作業)

そんな折、先日の新聞には早くも桜の開花予想が出ており、平年よりやや早まる可能性が高いことでした。このことはブドウの萌芽の時期を推測する材料になります。寒さが厳しい=開花(萌芽)が遅いと考えるのが一般的ですが、一方ではが順調であれば“休眠打破”が促されることで、萌芽が早まると考えることもできるのです。

寒さは当分続きそうですが、早くも気象条件を気にしながら、今後の作業スケジュールを立てていく季節になってきました。(潮上史生)

2013年3月

もう一人の栽培スタッフ?

2005年から始まった三澤農場での甲州種の垣根式栽培への挑戦も9年目を迎え、中でも今後その中核を担ってゆく2009年に拡張した3ヘクタールの専用畑の甲州種も、2/3程度が成木と呼べるまでに成長してきました。

その成木化に伴う収穫量増は弊社にとって待ちわびたことなのですが、それに比例し増してゆく栽培管理労力にどう対処してゆくのか?今私達の頭を悩ませています。それを解決する為にはまず冬の間にブドウ樹の生育をイメージすること、そして各品種・区画ごとの特性に合わせ垣根設備の改良を重ねてゆくことが重要になります。特に樹勢の旺盛な甲州種の垣根式栽培において、この垣根設備の改良は単なる作業性の向上だけでない大きな意味を持ちます。


(甲州の垣根整備が進みます)

かつて甲州種を垣根式で栽培することは不可能と云われていました。それは甲州種が樹冠を拡大させることで樹勢を分散させる棚式栽培が選ばれてきたことから、樹冠を小さくし収量を抑える垣根式栽培に仕立てることが、甲州種の特性にそぐわない栽培方法であるという実情からきています。そして過去8年間甲州種を垣根式で栽培してきた私達が毎年直面する課題も、やはりその旺盛な甲州種の樹勢にからくるもの、そしてその樹勢に栽培管理が追い付いてゆかないという現実に起因するものが殆どなのです。

それらの課題の解決には、根本的には垣根式に適した甲州種の系統選抜(遠大な計画であるが実生栽培も含む)を進めること、更に土づくりや排水性の確保といった栽培基盤の整備を抜きにはできませんが、ブドウ栽培にとってのもう1つの重要な概念であるキャノピーマネージメント≒樹冠管理(誘引や摘心といった新梢管理と云った方が解りやすいでしょう)を無視することもできません。それは前述したように棚式が樹冠を拡大することで樹勢をコントロールするのに対し、垣根式では樹冠を小さくすることを目指す為、より積極的に誘引や摘芯をしてやらなければ必要な部位に養分を回すことが難しく、更に樹勢の旺盛な甲州種にとっては、他の欧州系品種に比べ尚更これらの作業の重要度が増すのです。逆に云えば最適なタイミングでのキャノピーマネージメントを行うことで果実品質の向上や花芽の充実・枝の登熟などに繋げられるのです。

この最適なタイミングでのキャノピーマネージメントを実現する上で垣根設備の役割は大きく、改良《具体的には枝を支持する針金をどこに何本張ってゆくかなど》を重ねてゆくことで目指すべきブドウ栽培の一躍を担ってくれる栽培スタッフにもなり得るのです。恐らく未だ完成形ではない2013年バージョンの甲州垣根式栽培システムですが、まだまだ課題の多い一定規模での甲州種垣根式栽培の確立に向け、最大限の力を発揮してもらえるよう私達の意思を注いでいきます。

(潮上史生)

2013年4月

萌芽はもうすぐ

春の草花が徐々に芽吹き始める中、ブドウ樹も活動を始めました。そんな中12月から断続的に続けていた剪定作業も、3月22日に最後の甲州にて終えました。厳冬期には寒さや乾燥から切り口を保護する為に殺菌を兼ねた癒合剤を塗布します。しかし3月の後半になるとブドウの樹液流動“水あげ”が活発化し剪定した切り口からは瞬く間にポタポタと樹液が滴り落ちる為、春先の剪定ではその必要がなくなります。

又この水あげを待って始める作業が「結果母枝の誘引」です。ブドウはその年に萌芽する新梢に花房がつき実がなるので、新梢のことを結果枝ともいいます。それに対して、昨年の新梢が木質化した熟枝のことを、その芽から今年の新梢が萌芽するので結果母枝と呼びます。樹液によって柔軟性を持ち曲げやすくなった結果母枝を、垣根施設に水平に張られたワイヤーへ固定=誘引します。


(ブドウの涙の一滴)

この水あげと云われる活動、英語では樹液を出すという意味の“ブリーディング(bleeding)”、フランス語では涙という意味の“プルー(pleurs)”と呼び、休眠から覚めたブドウ樹が活動を始めたことの証でもあり、根が吸い上げた養水分を幹から各枝、さらに芽などに行き渡らせます。そして一定の温度条件に達すると萌芽を迎えます。

3月に入り急速に気温が上がったことで、水あげが昨年より2週間以上早く始まりました。このまま寒の戻りが無ければ萌芽は大幅に早まるでしょう。早い春の訪れとブドウ樹の活動に合わせて、急ピッチで誘引作業を頑張っています。

(潮上史生)

2013年5月

新緑の季節の訪れと共にブドウ樹も生育シーズンへ

この一月の間に冬枯れの木々からは次々と新しい芽が吹き、目にも鮮やかな新緑の季節が訪れました。ブドウ樹も順に萌芽が始まり、一番早いシャルドネの萌芽日(50%萌芽の状態)は平年より早く、萌芽の遅かった昨年よりも約2週間早い4月18日となりました。これまでお伝えしてきた通り、今春は寒さの厳しかった冬から一気に気温が上昇し、3月~4月上旬の平均気温が平年に比べ大幅に高かったことが、萌芽を促進させました。

一方でこのような年には萌芽後に寒さが戻ることが多く、遅霜の被害が憂慮されます。案の定4月12日と22日には最低気温が氷点下まで下がり、山梨県内でもブドウやトウモロコシなどに大きな被害をもたらしました。中でも巨峰の産地として知られる山梨市牧丘では、ハウス栽培を中心に萌芽後の芽そのものが枯れる直接的な収量減、及び展葉したての若葉が枯れることで、その後の新梢の伸びの停滞や開花期の養分不足が引き起こす結実不良が心配されるなど甚大な被害が出ました。


(伸びゆくシャルドネの新梢)

幸いにも三澤農場での被害はシャルドネの極一部に留まり、大きな被害は免れています。またこの寒の戻りにより各品種の萌芽の時期が適度にバラついており、これは栽培管理の労力分散という点では逆にメリットとなります。1つの事象がリスクにもメリットにもなり得るというブドウ栽培。不可抗力ではありますが、近年の極端な天候不順から作物を守るには、それらのリスクを分散させつつ品質との両立を図るべく品種やクローン・台木の選択、剪定方法や仕立などを始めとする栽培管理方法を追求してゆく必要があります。

いよいよ始まった生育シーズン。今年も様々な状況に直面するでしょうが、気を引き締め万全の構えをもって臨んでゆきます。半年後に笑顔でヴィンテージを終えられるように・・・。

(潮上史生)

2013年6月

垣根甲州、収量増へ期待!

次々に開いていった黄緑色の若葉が次第に大きくなり濃い緑色の成葉となります。その成葉の数が若葉を上回る頃に迎える“養分転換期”を過ぎると、ブドウの光合成は拡大生産期に入り新梢の生長は勢いを増していきます。そしてもうじき迎えるブドウの開花。関東甲信越地方は早くも梅雨入りする中、ブドウ樹の生育も目まぐるしく移ろっていきます。

予てから栽培家や農家の間では今年、当たり年だった昨年の影響を受け裏作になるのでは?との見方が囁かれていました。これは、一般的に良年は収量過多になる為に翌年への貯蔵養分が不足したり、花芽分化が悪くなったりする傾向があることから、良年の翌年は不作になるという説によるものです。


(甲州の開花、花弁(花びら)落下の瞬間)

そんな中、私達にとっては一つ励みになる事柄を見つけました。それは一般的に花穂(房になる小花)を持ち難いとされる垣根甲州で花穂の数が年々増えてきており、2009年に植栽した樹では空枝(花穂のない枝)は殆ど無く、中には3つの花穂がついている枝も確認されたのです。これは甲州種の垣根式栽培で問題となる強すぎる樹勢をコントロールする為に、高畝式や暗渠排水溝などで徹底的に排水性を高めたことと、適切なキャノピーマネージメントを行うことで生殖生長型(養分を果実や翌年の貯蔵養分・花芽分化へ仕向けること)の樹体を作ってきたことが実を結び始めている一つの表れであると云えます。

また一部区画で採用しているGDC(ジェネバ・ダブル・カーテン)と呼ばれる仕立て型は、新梢を下に垂らす(枝に仕向ける養分を少なくする)ことで誘引作業の省力化を図ると同時に、より自然に生殖生長型の樹体をつくることを目指します。3年目を迎えるこのGDC畑でも花穂の数が増えてきており順調な収量増が見込まれます。

こうして良い兆候が見受けられる“今”ですが、重要な生育ステージはまだまだこれから。天候に留意し、病害予防を徹底しながら開花を迎えます。

(潮上史生)

2013年7月

結実から果粒肥大へ

梅雨らしい空模様が続いています。ブドウ栽培者にとってこの時期の雨は、普通うんざりという気持ちになるものですが、今年はそれ程雨が気になりません。それというのも6月15日頃からようやくまとまった雨が降り始める前までは、極端な低降水量だった為です(5月の降水量は僅か14mm)。

やはり通常の生育環境と極端に異なる生育条件というものは、植物に少なからず影響を与えます。本来なら根から大量に養水分吸い上げ、各器官に分配しながら、グングンと枝葉を茂らせ樹体を充実させてゆく時期に、低降水量の影響で生長が停滞していたことで、開花→結実時の養分不足の影響が顕著に出ています。そのひとつが花振るい。また、降雨に恵まれなかったこの時期までのブドウの葉の色の淡さです。

ただこれが必ずしも悪い結果に繋がるという訳ではありません。重要なのはブドウの生育と結実の程度にあわせた新梢管理を行ってゆくこと。ブドウの成熟期にどれだけしっかりとした葉を確保し、雨の多いこの時期に幼果を健全に生育させるかということに神経を使います。毎年違う条件だからこそブドウ栽培・ワインづくりはおもしろいのです。

降水量の増加とともに再び伸長のスピードを上げてゆく新梢。それと同時に雑草の伸びも梅雨時期本来のものになってきました。ふと雑草の伸びた畑を歩いていると繁殖期を迎えたキジの巣づくりに出くわし、猛烈に威嚇をされることも度々。

雑草も動物も子孫を残す為に全霊を傾けている中で、ブドウの果粒も日に日に大きくなってゆきます。

(潮上史生)

2013年8月

ヴェレーゾンを迎えます

“梅雨明け十日の猛暑”の言葉通り、平年より15日も早い7月6日の梅雨明けと同時に勝沼では4日連続39度を超える猛暑になるなど、厳しい暑さが続いています。

それとともに特徴的なのが、萌芽後から続く低降水量。各地から集中豪雨の報がある一方で三澤農場の5月~7月下旬の降水量は139.5mmという稀に見る降水量の少なさとなっています。そんな気象条件の中、三澤農場のブドウは一部に厳しい暑さと日射による縮果症と呼ばれる生理障害が出ていますが、病害は極めて少ない状態で生育を続けています。


(ヴェレーゾン入りしたメルロ)

醸造用ブドウの品質面で重要な要素である黒ブドウの着色や糖度上昇は、顆粒肥大が一段落しヴェレーゾン迎えるこの時期から収穫期までの、高すぎない気温と降水量の少なさ≒水分ストレスが良い影響を与えることが解っています。厳しい暑さと低降水量は8月も続く見込みですが、その年その年の気象条件を特徴とし、最良の結果に結びつける為に必要なのは、先を読みつつも現実に即した栽培管理です。

      

ヴェレーゾンから成熟期。ブドウ畑が最も華やかに活気づく季節を、与えられた条件の中で最善を尽くし迎えます。

(潮上史生)

2013年9月

シャルドネの収穫が始まりました

平年を大きく上回る記録的な猛暑が一段落し、暑さの中にも秋の気配が感じられるようになってきました。
この暑さによってブドウの成熟は早く進んでおり、中でも糖度の増加より酸の減少が進みがちであることから、糖度よりも酸を重視するシャルドネのスパークリングロットを昨年よりも2週間以上早く8月22日に収穫しました。また暑さと共に好天に恵まれ雨の少ない状態が続いており、ブドウ樹には適度な水分ストレスが掛かっている為に、黒ブドウの色調は非常に濃く、凝縮感を感じさせます。


(収穫したシャルドネ)

そして雨の少なさのもう一つの恩恵はブドウ樹の病害の少なさにあります。これまで極一部に灰色カビ病とウドンコ病が発生していますが、ブドウの病害の中でも時に甚大な被害をもたらすベト病は全く発生していません。この時期までにベト病が全く出ていないというのは極めて稀で、健全さと収穫量の確保という点で昨年に引き続き大いに期待できる年と云えそうです。
9月に入ると現在北日本に位置している前線が南下し秋雨の季節を迎えます。収穫まであと僅かな大事な時期を、準備を怠らずに過ごしてゆきます。

(潮上史生)

2013年10月

甲州GDCへの期待

近畿地方を中心に大きな被害をもたらした台風18号は、その後珍しく三澤農場のある北杜市の真上を通過していきました。三澤農場でも畝が2本倒れるといった被害がありましたが、幸いにしてブドウそのものへの被害はなく、台風を境に入れ替わった秋の空気の中で収穫を続けています。

現在はメルロの収穫が最盛期ですが、もうじき垣根甲州の収穫が始まります。

その垣根甲州、大規模に植栽を始めた09年からの区画での生産量は順調に伸びており、画期的な収量増が望めそうです。

      


(収穫間近の甲州GDC)

また、新たな取り組みとして始めたGDCの区画でも大幅な収穫量増が見込まれます。

GDCとはアメリカで開発されたジェネバ・ダブル・カーテンと呼ばれる仕立て方式で、新梢を上に伸ばすVSP(Vertical Shoot Positioning=新梢垂直誘引)方式 とは逆に主枝を高く配置し、新梢を下に垂らす仕立て方式で、甲州VSPの不利な点【新梢の樹勢が強めになることによって、結実が悪くなり易いこと。更に新梢管 理に多大な労力がかかる】を軽減することを狙って採用しています。更に新梢を下に垂らすことで果実へ養分転流がスムーズに行われるなどのメリットも考えら れます。

      


(甲州GDCの全景)

      

凝縮感のあるワイン用甲州を安定して且つ低コストで栽培することを狙ってのGDCですが、三澤農場のGDCではもう一歩踏み込んだ考えを取り入れています。

1つ目は排水性を向上させ樹勢を抑える為に高畝式を採用しているところ、2つ目に結実が良くなることで一樹当りの収穫量が増え、品質低下に繋がることを防ぐ為に甲州としては前例のない密植(樹間1m)を採用しているところです。      

今後さらに栽培と観察を続けてゆく中で新たな発見や改善点もあると思いますが、垣根甲州の栽培方法の1つとして大きな期待を寄せています。

他には無いオリジナルなこの甲州GDCを、私としては“グレイス・ダブル・カーテン”と名付けたいと考えています!
(潮上史生)

2013年11月

嵐の10月を乗り越えて
例年であれば穏やかな晴天が続く10月ですが、今年は10月に日本に接近(台風の中心が国内の観測点から300km以内に入るとこと)する台風が過去最多の6個となり、また9月・10月の降水量も400mmを超えるなど、この頃のお天道様はなかなかブドウの成熟に適した天候を用意してはくれません。
それでも広い視野で見れば、伊豆大島など大きな被害に逢われた地域の方々からすれば、雨だけで済んでいるということを幸いと思わなければならないでしょう。
10月末の今現在、収穫はいよいよ大詰めに差し掛かっています。
順調に収量を増やした甲州も残りあと僅か。厳しい条件を克服し垣根甲州の品質を確保する為、ブドウの熟度を細かくチェックし最適な収穫ロットを作る、更に未熟果を徹底的に除くといった収穫を行い、全体としてひとつの目標である糖度20度を超えています。
最晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンも連続した降雨によって病果が増えてきていますが、収穫時の手入れと仕込み時の選果を徹底し品質を確保できるよう、最後の収穫・仕込みまで気持ちを込めていきます。
(潮上史生)

2013年12月

2013年三澤農場ヴィンテージリポート

春から初夏 萌芽時期に大きな差
昨冬から今冬にかけての平年を下回る寒さから一転し、3月からの急速な気温上昇によってシャルドネの萌芽はここ数年の中では早い4月18日、その後寒の戻りがあった為に最後に萌芽したカベルネソーヴィニヨンは5月5日となり、早熟・晩熟の生育差が明確なスタートとなりました。その萌芽期に当る4月中旬から開花期に当る6月中旬にかけての降水量が少なく一部の樹には欠乏症が発生、また花振るいや結実不良(受精していない為に、完全に肥大しない粒)が多くなりました。養水分を糧に枝葉を勢いよく伸ばしていく展葉期に、養水分の供給が滞り気味になったことで、一方では全体的に自然な収量制限がなされ品質への期待を抱かせました。梅雨全体としても降水量が少なかったことに加え、梅雨明けが7月6日と平年に比べ15日も早かったことで、病害が全くといっていい程発生しない状態で夏を迎えました。


猛暑の夏 ヴェレーゾンを健全に迎える
その梅雨明け直後から全国的に記録的猛暑となる中、山梨県でも甲府で40.7℃、勝沼で40.5℃(共に8月10日)を記録するなど長く暑い夏となったのは周知の通りです。この暑さと好天・少雨の下で各品種とも過去にない健全な状態でヴェレーゾンを迎え、暑すぎることで心配されていた赤品種の着色に関しても極端な水分ストレスが好影響をもたらし、良好な着色となることが予想されました。糖度上昇も勢いよく8月下旬の最初の果汁分析時点で、酸を重視するシャルドネスパークリングロットでは既に十分な糖と酸のバランスに達していたことから、これも過去に例がない程早い8月22日に収穫を行いました。この傾向はスティルワイン用のシャルドネにも当て嵌まり、例年よりも早く収穫してバランスを保ちました。


残暑続く秋 ゆっくりとした酸の減少
9月も引き続き日中は厳しい残暑が続いたものの、中旬になると漸く朝晩に秋めいた空気を感じるようになり、酸の減少スピードも緩やかになりました。秋雨前線は東北地方に停滞したままで山梨県への直接の影響は少なく、また9月16日に台風18号が三澤農場のほぼ真上を通過して行きまとまった降雨となりましたが、通過するスピードが速かった為にそれほど大きな影響が無かったのは幸いです。そしてこのまま穏やかな秋の到来となることを期待していましたが、2013年の10月は日本に接近した台風の数が観測史上最多の6個となり、更に遅れて南下してきた秋雨前線が台風に刺激されるなどして、今年の生育シーズン(4月~10月)で最も降水量の多い月となったのです(降水量は平年比2倍、日照時間は平年比80%)。


甲州の糖度20度を超える
こうした成熟期の気象条件の下、赤品種の中で早熟なメルロは酸度がやや低かったものの、秋雨と台風の影響を殆ど受けなかった為、良好な着色と凝縮感が得られました。また10月以降に収穫適期を迎える晩熟品種〔甲州・プチヴェルド・カベルネフラン・カベルネソーヴィニヨン〕については、私達にとって大きな進展となることもいくつか確認できました。
その一つが成木化に伴い大幅に収穫量を伸ばした垣根甲州で、全体としてひとつの目標としている糖度20度超えを達成。またプチヴェルド・カベルネソーヴィニヨンについてはやや不順な天候の下、果梗萎縮(梗が枯れる生理障害)と病気の発生に悩まされたものの、収穫と仕込み日程をギリギリで調整しながら選果を徹底し、満足できる品質のブドウを得ることができました。更にカベルネフランについては年々品質が安定してきており、今年も非常に健全且つ凝縮感のあるブドウが収穫できたことは特筆すべきことです。

天候と向き合い、最善を尽くす
好条件の中で高品質のブドウが収穫できるのは当然のことですが、今年のように極端な条件の年に良質なブドウを収穫する為には、私達がブドウの生育をいつも以上に細く観察し、状況に応じた対処をしなくてはなりません。例えば今年は樹勢が旺盛な垣根甲州のキャノピーマネージメントに成熟期に至るまでより力を入れたこと。更に系統や台木、植えられている区画の特徴を細かく調べ最適な収穫ロットを選定したことなどが結果として表れてきています。また赤品種、中でもカベルネソーヴィニヨンにとっての欠陥臭とされるピーマン臭の原因物質であるメトキシピラジンを減少させる為に房周りの除葉を行いますが、この除葉を行うタイミングにも注意し猛暑による悪影響を受けないよう、最高気温が30℃を下回る9月中旬まで待って行いました(日射によって果実中のメトキシピラジンが分解される一方、暑い時期の除葉は果温の上昇により酸落ちに繋がり、果実品質のバランスを崩してしまう)。


今後も今年のような猛暑や不安定な天候は予想されるものです。今後栽培の面からどのようなアプローチができるのか、難しい中にも2013年はその為の多くの経験を得られたと共に、予想を超える可能性をも見出せた年になりました。
(潮上史生)